Notelets

誰かのために何かを作る日々の断章。試論。仮説。フィールドノーツ。

寝る前の読書についての覚え書き

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夜、寝る前に、布団のなかでぬくぬくとして、そして好きな本を読むのはなんともおちつく時間だ。

寝る前にする読書、というのがどれくらいの人がやっていることなのかはわからないが、ひとつの安眠の方法だという気はする。

これについてずっと前から不思議に思っていることがある。布団の中で物語を読みながら眠りに落ちつつある時、読んでいたところのさらに先を「読んでいる」ことがある。実際には読んでない。目はつぶっている。つまり、その先を脳内で勝手に作り出している。読んでいるつもりになっている。なんでそんなことをしているのか。それだけにとどまらず、そのお話に何かしらの感想を覚えたりする。

寝る前の読書は「いいこと」なのか?

それにしても、寝る前に本を読むのはいいことなのだろうか。そもそもなにがいいことなのかよくわからないので、あまりいい問いではないのは承知で。

寝る前に読んだことは、記憶に残りやすい。……という話があるようだ。そういうこともあるかもしれない。とも感じる。

筆者の場合、英語を集中的に学ぼうとしていた時、寝る前に単語集的なものを読んでいた。これが習慣になっていた。確かにその時期は、英語力が少しは上がったような気がする。……とは言えもちろんその他の時間も英語に触れていたので、「寝る前英単語」が効いたのかはよくわからないけど。

読書はストレス解消になる、という話もあるらしい。そうかもしれない、と思う。もし本当にそうなら、寝る前に少しでも穏やかな気持ちになって眠りに落ちるのは、悪いことではないだろう。

こういうことを医師や研究者がなにかしらのエビデンスを元に語っているのを目にしたことがあるような気もする。「研究の結果、1日30分の読書がストレスレベルが下がることが……」みたいな。しかし、こういうことは極めて属人的な性質のもので、全体としては確かに医師が言うことが正しいのかもしれないが、それが自分にとっていいことなのかはまた別の話、とも思う。何を読むのかでも変わるだろう。

個人的には、寝床で本を読む生活を少なくとも30年ぐらいは続けているように思う。とすれば、自分には合っているのだろう。もっとも単なる悪癖という可能性もあるが。基本的にはいいことなのだと思いたい。

何を読むか?

以前に聞いた話で、その人は寝る前にマンガを読むらしい。それが至福の時間だとか。すばらしい。

その時、未読のものではなく、すでに読んだものを読むとも言っていた。確かに、楽しみに待って、買ってきて、新しく読むのは「寝る前読書」とは違う気もする。マンガの新刊はお楽しみの時間で、お茶とお菓子とともに、というニュアンス。これから眠ろうとする時は、楽しみというよりリラックスの時間だという感じがある。

個人的には、軽いエッセイとか旅行記が多い。やはり再読のことも多い。有名なもので言えば、外山滋比古『知的生産の技術』などのエッセイ、あるいは司馬遼太郎の『街道をゆく』シリーズなど。つまり、何かを強く訴えてくるわけでもなく、著者の態度が良識的なもの。かつ、途中で寝落ちしても後に響かないもの(物語のたぐいは、変なところで中断してしまうと味が落ちる気がする)。

寝る前ホラー

ホラーを好んで読んでいたこともあった。悪夢を見そうな気もするが、そんなこともない。おそらく、現実と切り離された世界に心を遊ばせることで、ストレス解消になっているのではないだろうか。

例えば『新耳袋』のシリーズ。実話怪談というジャンルをブームにした立役者。多くのフォロワーを生んで、それが今の怪談ブームにつながっているらしい。

ただし、今、書店の棚に並んでいる実話怪談の多くは、怖がらせようとおどろおどろしく、少し子どもっぽく感じてしまう。もうちょっと抑制の効いたものが読みたい。

幽霊というものを信じているわけではない。しかし、「もしかしたら、そんなことがあるのかもしれない」と思わせてくれる瞬間がある。そういうホラー、怪談もある。これも、実世界と切り離される効果があるのかもしれない。

寝る前に難しい本、マジメな本

難しい本はどうか? 確かに、寝やすい。すぐにまぶたが落ちてくる。安眠効果抜群。

とは言え、難しい本をあえて読む、しかし2ページだけ、という遊びもある。哲学の本がいいかもしれない。例えば見ているモノと、モノ自体について語られているページ(もう意味がわからない)を読む。そして目をつぶり、ライトを消し、その内容を、吟味する。

これもある意味、現実と切り離された世界に遊ぶことになのかもしれない。形而下でなく形而上。つまり、哲学者が問題にしていることは、筆者のような日々の生活に追われる凡人にとって、関係のない世界だ(とここでは断言しておく)。結果、よく眠れる。

あるいは、前述の英語を学んでいた時に、単語集を読んだと書いたが、正確に言えば「英語に関する読み物」だった。布団の中で「憶えよう!」という気にはならない。ただ気軽な気分で、今、集中しているテーマをより楽しむために、というニュアンスで読んでいた。例えばこういう↓、そのテーマの周辺にあるもの。

⇒英語の語源 (角川ソフィア文庫)   石井 米雄
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GN4WTSP/

⇒英語の歴史 過去から未来への物語 (中公新書)   寺澤盾
https://www.amazon.co.jp/dp/B00LMB2VQ2/

どう読むか? Kindleのことなど

とは言え、横になって読むのはあまり便利な体勢ではない。本をどう保持するか、どうめくるか、どう疲れないで読むか、どう眠りの体勢に入るか……。コツがいるというか、みなさんきっと、自分なりの体勢があるだろう。

例えば電子書籍Kindleはどうか?

スマートフォンKindleは、個人的には読む気にならない。画面小さすぎ。「ブルーライトが睡眠を阻害する」というような話もあるようだ。個人的にはよくわからないが。

Kindleの、Paper white、つまりKindle専用の白黒のアレは、結構使っている。特に寝床本にはぴったり、という気がしている。

暗くても読める。めくる動作も1タップで簡単。寝落ちしても、自動で電源がオフになる。また読み進めたところがまちがいなく保存されている。

寝る前に限らず、Kindleで読むのは紙に比べて理解度が下がる気がしている。しかし寝床本はたいてい気楽なものを読んでいるので、あまり問題にならない。機能的な面も心理的な面も、かなりパーフェクトなのではないか。

iPadKindleという手もある。が、まず9インチ10インチは、寝床本としては大きい。じゃあminiで、となるが、それでもちょっと重いのが気になって、続かない。

どう読むか? 体勢とか

どんな体勢で読むか、というのも重大な課題。

あおむけで、普通の高さのマクラで、というのは厳しいだろう。腕で本を持ち上げておかなかければならない。すぐに疲れる。じゃあ、ということでクッションなどで頭を高くして、というのはある。本は腹のあたりに置くことになり、持ち上げなくていい。

うつ伏せで、胸の下になにか挟んで顔を持ち上げ、というのもありそうだが、個人的にはつらい。

最も多いのは横向き。首を高めのマクラで安定させて、本は手と布団で保持する。

このとき、メガネ族の泣き所がある。マクラに完全に頭をあずけてしまうと、メガネがズレる。マクラでメガネのつるが押され、おかしなことになる。当たり前だけど。

そうならないよう、まず本は片手で持つ(下側の手)。そしてもう片方の手(上側の手)は、頭の下に入れて、メガネのつるがマクラと干渉しないようにうまいコトやる。

(……改めて文字にしてみたら↑こんな感じになったが、実際には自然にそうしていただけの話。それにしても、どうでもいい話)

寝ながら読むための専用の場所を作ってしまう人もいるようだ。ハンモックに立派な「空中読書台」を組み合わせている。すごい。↓

灯り・ライト・読書灯のこと

上記の記事でも語られている通り、灯り、ライトは重要だ。具合が悪いとすぐに疲れる。若い時は気にならなかったが、加齢と共に環境が重要になってきている。

寝る前に、ということでいえば、やはりタイマー付きが安心。そしてやはり、白い・青い光は目が覚めすぎるように思う。個人的な選択基準は、暖色系・タイマー付き・充電式(コードはうっとうしい)というところ。Amazonなんかにある安いものは、すぐにダメになるイメージ。接触不良?か何かですぐに使えなくなったことが2〜3回あったので、それなりの値段を出すようにしている。

片手で文庫か新書

そういうわけで、個人的な寝床本は、紙の場合は片手で読める文庫か新書になる。

片手で保持したまま、その手でめくる。これを誰かに言ったら驚かれたことがあるが、誰でもやっていることなのではないか。

個人的には、新書ぐらいまでならそれができる。それ以上の大きさ・重さの本はつらい。あまり厚いのもやりづらい。

もちろん、紙のあんばいで、片手ではめくりづらいこともある。また、マンガは、めくる動作がひんぱんなので、ちょっとストレスかもしれない。

Kindleなら判型の制限はなくなる。結局、寝床本はKindleが一番、ということになるか。マンガを読むにはちょっと小さい気もするが、若い人は気にならないのかもしれない(スマートフォンでも読んでいるようだし)。