Notelets

誰かのために何かを作る日々の断章。試論。仮説。フィールドノーツ。

「めんどくさい……」をどうにかしたいおじさん達の結論

本当に久しぶりに、同級生と会う機会があった。ご健勝で何より。じじいがふたり、このぐらいのトシになると、笑えない出来事があるのも普通なので:-0

その中で、なぜか「あーめんどくせ、なんもしたくね、という状態になったときにどうするか?」という話になった。これがなかなかおもしろかったのでメモしておく。

 

休む、という話を出発点にして、

まず、そんな状態が長く続くようであれば、それは医者に行った方がいい、という話。そこまでいかずとも、やる気がなきゃ休む。それが基本というか、土台。

ただ、休み方もいろいろある。

旅行に行くとか痛飲するとか、そういうアクティブな休みもいい。また、寝るのももちろん大事。

けど、もっとジトっと過ごすのもいいよな、って話になった。例えば、ひとりで家に引きこもって、好きな本をひたすら読むとか。映画とかドラマもいい。内向型の回復方法。

今は家から一歩も出ずとも、ハイクオリティな映像がいくらでも見られる。最近では、『アストリッドとラファエル』というフランスのドラマがよかった(これはNHK)。自閉症の主人公が殺人事件を解決するミステリもの。謎解きもさることながら、もちろんヨーロッパの作品らしく、「人」という要素にもたっぷり踏み込む。

それ以外の欲求も満たしたい。ポテチとかせんべいとか、欲望のままに選んだ食べ物を用意して、あるいはステーキ肉を買い込んでおいて夜の楽しみにして……とかなんとか。ただただ自堕落に、好きなモノだけで固める。贅沢だ。友人氏は、冷凍のフライドポテトを山ほど作るのがいいって言っていた。カロリー……の問題はあるのかもしれないが、マジックポイント回復のためなら、それもいいのではないか?

さらに、朝から風呂、しかも湯船に入る、という話もあった。これは確かに、気分が変わる。温まれば、体が軽くなって、気分も変わる。いつもと違うモードになって、ワーキングメモリもさっぱりすっきり。いずれにせよ、このあたりは皆さんがそれぞれの方法をお持ちだろう。

 

肉体には逆らわない

単にバイオリズムの問題であることもある。クロノタイプ、というのか。一日のなかで、アクティブになる時とそうでない時がある。忙しく過ごしているとわかりづらくなるが、しかし、気を付けていると、自分の傾向がわかってくる。

自分の場合は、朝イチの数時間だけがマシな方で、あとはうだうだ。特に昼頃に、なんにもしたくなくなる。そういうリズムがあるらしく、それに逆らってもうまくいかない。疲れるだけ。体には従うべき、というのが結論。やる気のない時もある、と割り切って、抵抗しない。ムダにあがかない。また後でやる気になる時が来る、と冷静に受け止める。友人氏ははっきり夜型らしい。が、やはり、年齢と共に少し前倒しになってきたという。

クロノタイプは見過ごされがちな気もするが、かなり重要なことなのではないか。自分の状態と、仕事や家族や世の中と折り合いを付けることが、ひとつの生活の柱になるのではないか。

 

でも、問題はそんなことじゃない

そうやって、ある意味能動的に休んだり、調整できたりする時は、じつはそんなに問題じゃない。冒頭に書いた通り、「なにもしたくない」わけで、ポテチを買いに行くのも面倒、という話かもしれない。さらに最悪なことに、今、やらなくてはならないことが山積みなのかもしれない。休んでいる場合ではない。

そんなときのごくごく一般的なアドバイスは、「ちょっとでいいから動け」というものだろう。これも確かに有用だ。万能薬と言っていい。

小さく。1時間じゃなくて、3分だけ。80点を目指すのではなく、30点。100行じゃなくて、3行。全部のパーツに目を通すのではなく、一つだけに着目してみる。小分けにしてみる。

行動をし始めれば、なんとかなる。……というのは、多くの人が体で知っていることだろう。

逆に言えば、仕事も勉強も、やり始めるのが一番難しい。それを乗り越えるための、自分なりのスタートの儀式が必要だ。身の回りを整理するところから始めるとか、らくがきから始める、いったん会議室に閉じこもる……とかなんとか、きっとみなさんがそれぞれの儀式をお持ちだろう。これを強化すべし。明確にすべし。

多少なりとも動く余力があるなら、まずは「課題を書き出す」ところから始める。気になっていることを箇条書きにする。書き出す。そうして「今自分が抱えているボール」を見渡す。一覧性は、いろいろなところで重要だ。これができれば、少し落ち着く。そして「アレ、そんなにたいしたことない……」と思える(かもしれない)。誰かに助けを求めることに思い至るかもしれない。経験則としては、少なくとも、できることがひとつは見つかる。つまり、動き始められる。

 

「わからないから動けない」場合もある

あいまいな話だけれども、どうすればいいのか、これからどうなるのか、わからない。予測がつかない。それが抵抗・障害になる、という話もあった。

例えば、役所に何かの手続きをしに行かなければならない、とか。しょっちゅうやることでもないし、複雑な手続きだったりもする。たいていの人が苦手な作業。こういうのは、行く前には「わからない」ことだと言える。しかも、なにかまずいことになるかもしれないような内容ならなおさら。

逆に、わかっていれば、役所に行って何をすればいいのか、どんな準備をすればいいのかのイメージがつくのなら、動ける。

つまり、「わからないことが、一番怖い」。怖いというのはおおげさかもしれないが、なんらかのリスクみたいなものを感じれば、行動はにぶる。だから何があるかを知るのが大切。ちょっとでいいから、その行動について、調べてみよ。イメージを作ってみよ。幽霊の正体見たり枯れ尾花。

 

さらに、問題──気になり続けていること

あるいは「気になっているけど、片付いていない、片付かないことがある」というのもある、という話もあった。「本当はやりたくない」ことも含まれる。

例えば、もうそう長くはない、父親の墓をどうしよう、とか。そこまでじゃなくても、粗大ゴミに出したいものがあるのだが、予約を入れたりなんだりするのが面倒、とか。単に本棚が片付かず、本が雪崩を起こしている、みたいな卑近な話もそれにあたる。片付けたい、終わらせたいのに、終わらせることができないでぐずぐずしている。

こういうものがあると、行動がにぶる。ほとんど忘れていると思っていたとしても、そういう気になることに脳みそのリソースを奪われる。宿題に足を掴まれ、ずぶずぶと沈んでいく。

こういうものが何かの拍子に片付くと、妙にすっきりさっぱりして、行動力が増す。大掃除をした後の気分、というのがわかりやすいだろうか。引っ越し後、でもいい。

この手のタスクを、都度都度テキパキと進めて、ボールを持たないタイプの人もいる。それはすばらしいことだ。しかし、一見そう見える人も、実はそれなりに何か宿題を抱えていることも多い、というのはある程度の年齢になれば、誰もが気付くことなのではないか。それから逃げるために、何か別のことをしているという一面もあるのではないか。

ガクモン的には、ツァイガルニク効果とかオブシアンキーナー効果とかって言ったりするのかもしれない。ヒトは未完のことが気になり続ける性質がある、というやつ。合理的な思考 or 意識では、気にする必要はないと判断したとしても、しかし、無意識 or 深層心理では気になってしまう。

これが積み重なり、こじれると、にっちもさっちもいかなくなる。本当に「めんどくせ、なんもしたくね」となる。気分とか無意識とかムードとか、御しがたい。度しがたい。意識ではなかなかコントロールできない。かといって無視し続けても、いろいろ支障が出る。侮るべからず、だよな。……とうなずき合った。

その場合の対応方法はあるか? ふたりの間では、結論は出せなかった。普通に考えて、どうあがいても「片付かない」ことはある。例えばペットが病気だ、とか(これは友人氏のリアル)。どうしようもない。

ただ、ヒントになるのは、「気分とは、その時の体で起こっていることを要約したものである」という脳科学の先生による1行。意識できる意識だけではなく、無意識みたいなものや疲れ具合、腹の減り具合、姿勢、気温、他人、空気……等々、いろいろなものを統合して、「気分」になっている。さらには腸内細菌まで、ヒトのムードに影響を及ぼしているらしい。

つまり、「気分」は実体を持つわけではない。素人の乱暴さを承知でこの場合に当てはめてみれば、「そのめんどくささを重く受け止めすぎるな」。ということになるのではないか。

もちろん本当に重大な心配事や、大きな課題は存在する。しかし一方で、確かに、ちょっとしたことで気分は変わる。変わり得る。「めんどくせ」と思っていても、やってみたら思いのほかかんたんだった、ということがほとんどだ。少なくとも、少し長い目で見れば、なんとかなる。

勢いでだらだら書いてしまったけど、「戦うな」とまとめることができるかもしれない。

やらなきゃいけない、と義務感・責任感に苛まれるよりも、自然に動けるようにする。
できてない、と残念に思うよりも、「そのうちできる」と楽観する。
ちょっとだけやってみる。「威力偵察」する。
ムリヤリやるのではなく、「自ずとできる」道を整える。
めんどくさい気分をどうにかしようとするよりも、気分は気分、と軽く捉えて戦わない。

違う表現をすれば「軽くいけ」。じじいになると、重いのが辛くなってくる。芭蕉俳諧の妙諦であるところの、「かろみ」が必要だ。……なんつって(軽く締めてみた)。