Notelets

誰かのために何かを作る日々の断章。試論。仮説。フィールドノーツ。

オフィス仕事の難易度が高すぎる(解ナシ)


とある知り合いと話していたら、その人のオフィスでは、ブラウザを自由に選べない、という話になった。その他にも制限がいろいろあるという。会社的に、何かご都合があるのだろう。

まあそれならそれで仕方ない、と感じる反面、そういうオフィスでは働くのが難しい、難易度が上がるのでは、とも思う。

 

そもそも今は、オフィス仕事の難易度が高すぎる。……と感じている。コミュニケーションや情報の構造が複雑過ぎる、と表現すべきか。別の言い方をすれば、認知負荷が高い。

現状、まずもって情報の在りか or 出どころがややこしい。散らかっている。電話とメール、対話に加え、SlackやらグループウェアやらBacklogなどのコラボレーションツール、もしくはプロジェクト管理ツール(というのか)等々。あの人はなんて言っていたんだっけ、それってどこにあるんだっけ? この企画の要件はどこに整理されているんだっけ? そもそも整理されているんだっけ? 整理しようとあれこれ見てみても、本当にこれで網羅していたっけ? ……等々。難しい。

そしてそれらが、主にブラウザで開かれる。社内システムはもちろんブラウザ。ドキュメント類もブラウザで開くことが多いし、Dropboxなどのストレージにもブラウザ経由だったりもする。DXという錦の御旗のもとにSaaSと呼ばれる、ブラウザで使うウェブサービスが導入される。だいたいメールもブラウザで開く人が多いのでは。つまり、タブなりウィンドウなりがごちゃごちゃばらばらと開く。

……というのはデジタルがらみの業界の話かもしれないが、まあ、世の中全体として、ホワイトカラー仕事においては、ブラウザを中心としたスクリーンでの作業がよりいっそう重要になってきている、というのは同じことだろう。

 

そんな状況で、ブラウザひとつ自由に選べないとなると、なかなか厳しい、と思ってしまう。ブラウザはまあいいとしても、根本的に、自分のコンピュータに自由度がないというのは……苦しい気がする。

コンピュータは、単純な道具というよりも、「外部脳」とでも言うべきもののように感じている。あるいは「外部足場」とか「体と一体になった道具」とか。ヒトの「認知システムの一部」と言ってもいいかもしれない。アンディ・クラーク的に言えば、われわれはすでにビットの世界につながったサイボーグ。

 

だから、情報をうまく扱おうと思えば、コンピュータをあれこれいじることになるように思う。自分なりの使い方を見いだすことになると思う。その程度はさまざまだろうが、いずれにせよ多くをコンピュータに頼ることになる。

ブラウザもそのシステムの一部で、こだわりや、使いやすい使いづらいがあるだろう。アドオンのようなものを入れたい人も多いはず。用途によってブラウザを使い分けたいとか、作業のコンテクストのスイッチングのためにあえて複数のブラウザを使いわけるとか、そういうこともあるだろう。

もちろん、かならずしも複数のブラウザが必要だというわけではない。しかし、ブラウザが選べない、という状況が象徴するのは、認知的にさまざまな個性を持った人々が、コンピュータをその人好みに扱えない、つまり情報をうまく扱えない、ということにつながるように思える。

言ってみれば、野球選手が「絶対にこのバットとグローブを使わなければならない」と制限されているようなもの。

 

そもそもスクリーンが表示する情報は、脳みそ的に扱いやすいものでもないと思う。実体がない。記号のみ。手ざわりも位置情報も、固有性もない。さらに言えば、スクリーンの向こう側の「仕組み」がわからないので、どう扱って良いか極めてわかりづらい。

そんな状況で、ブラウザは選べない、使い方に制限がある(アプリケーションを自由にインストールできない、とか)、外付けモニタは支給されず15インチの重たいPCのみ……というのような条件では、なかなか厳しい、と思っちゃう。

もちろん、業務内容的にそんなことが必要のない人も多いだろうし、与えられたバットでも3割打つ人もいる。気にならない人にとってはまったく気にならないことかもしれない。とは言え、一律に禁止してしまうのは……。

 

このオフィス仕事の難易度という課題、あるいはブラウザ仕事の煩雑さを、「そういうもん」「それがDX」「おじさんの、新時代への抵抗感」などと捉えるのもアリかもしれない。しかし、それなりの人たちが、問題にしているようでもある。

Notionというデジタルノートサービスは有名だ。あれはデータベース的に、またコラボーレーションを前提に、情報を集約しようとしているプロダクトだと認識している。これ自体も、なかなか複雑なシステムではあるものの。

www.notion.so

あるいは、テクノロジー・スタートアップ界隈にも、ブラウザという課題を解決しようとしている試みがあるらしい。

thebridge.jp

 

じゃあどうしようか、というのは地味にひっそり生きている自分にとっては荷が重すぎる。どなたか頭の良い人がなんとかしてくれると嬉しい。

しかし、組織の情報システム、という昔ながらの課題と捉えると、おそらく決定的なソリューションはないように思える。最終的には属人的な部分に落ちてしまう可能性が高そう。そこそこ機能している、という状態で満足すべきかもしれない。

個人がどう対応するか、という側面においては、何か対策や対応の原則みたいなものは導き出せるかもしれない。例えば情報構造を地図的に、座標系的に把握するとか、検索できるようにしておくとか、つまり、自分の脳みそにとって認知しやすい仕組みを作っておく。ただし、他人がからむと、これもなかなか難しい。結果、その場その場をなんとかしのいでいくしかない。……そんな感触は残る。

少し話を広げれば、そういう複雑な情報環境が、認知やヒトという存在そのものにどんな影響を与えているのかも気になる。そうした状況を包括的に理解するのも、なかなか難しい。が、AIの発展などと併せて、興味深いテーマであることは間違いない。……ので、やはり、どなたか頭の良い人に解決 or 解説をお願いするほかない :-)